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01

こんな世界。

そう思っていた。

 

君に出会うまではー。

 

 

 

ガタン ゴトン。

翼は電車の中、手すりにつかまることも無く、外の灰色の町をぼんやりとみていた。

外は雨。

雨は憂鬱だ。翼は思った。

栗色の髪に、濃い茶色の目は視点を何処にもあわせていない。

すらっとのびた身体にセンスの良い薄い水色のシャツと濃いグレーのGパン。

決して細身ではないが、身体が締まっており、どこかのアイドルとしてデビューできそうな位に、

彼には存在感があった。

ちらちらと視線を感じるが、気づかないふりをする。

日比野 翼 18歳 、大学生。

その容姿で周りの女性達の羨望を集める。

政治家の父を持ち、母は亡くなっている。

 

 

だが。

 

翼は孤独だった。

 

貧乏だったわけではない。住むところもある。

何かに困っていて悩みがあるわけではない。

 

全てがどうでもいいけだるさ。

あまり笑顔を見せない容姿端麗な顔。

全てにおいて翼は世界と向き合おうとはしなかった。

 

 

父は仕事で忙しく、母のぬくもりも感じることも無く母は亡くなり、ほとんどを自分一人できてきた。家族の温もりをしらぬまま18年間時は過ぎ去った。

父とはあまり話をしたことが無い。父は政治家になってほしいみたいだが、翼はなろうとは

しなかった。

親元を離れ、アパートを借りて一人で暮らしている。

これといって友達と呼べる者もいなく、一匹狼の様な所がある。

政治家の父を持ち、お金には困っていないのに、翼は全部自分自分で出来ることは自分でし、自分の足で立ち、自立をしていた。

 

プルルル。

「出会い柱、出会い柱です。」

アナウンスが流れ、電車が止まる。

「すみません、通してください。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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